補助金申請は中小企業診断士の専門技能

補助金

補助金申請は経営者にとって結構な負担

 日本には中小企業を支援するための補助金がいくつも用意されている。診断士界隈では、まず押さえるべき補助金として、小規模事業者持続化補助金、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、中小企業省力化投資補助金なんかがある。
 ただこの補助金たち、中小企業の経営者層が自力で申請するのはちょっとハードルが高い気がする。まず、申請の前に目を通さないといけない書類が多い。どんな補助金なのかを理解するために、数十ページの公募要領を読了しないといけない。時間を掛けて要領を読んでみると、自社が支援対象ではなかったりする。いざ申請しようとすると、今度は山のような書類を用意しなくてはいけない。申請して誰もが受け取れる補助金があればまだいい。でも現実は違う。獲得できるかどうか確実ではない補助金の申請に、忙しい経営者が自ら労力を投入するのはどう考えたって負担が大きい。

よく利用される補助金

 ここでは中小企業向けの補助金を3つ紹介することにする。小規模事業者持続化補助金、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、中小企業省力化投資補助金である。この記事の趣旨から外れるので、概要だけ説明する。

小規模事業者持続化補助金

 小規模事業者持続化補助金は以下の表の要件を満たす小規模事業者を対象とした補助金である。公募要領には「小規模事業者および一定要件を満たす特定非営利活動法人(以下「小規模事業者等」という。)が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更等に対応するために取り組む販路開拓等の取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とします。」と記載されている。具体的には、働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス制度の導入等への対応を補助する。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(もの補助)

 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業者、小規模企業者・小規模事業者、特定事業者の一部、特定非営利活動法人、社会福祉法人を対象としている。短く「もの補助」と呼ばれることが多い。公募要領では「今後複数年にわたる相次ぐ制度変更に対応するため、生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓を行う事業のために必要な設備投資等に要する経費の一部を補助する事業を行うことにより、中小企業者等の 生産性向上を促進し経済活性化を実現することを目的とします。」と謳われている。

中小企業省力化投資補助金

 中小企業省力化投資補助金の対象も、中小企業者、小規模企業者・小規模事業者、特定事業者の一部、特定非営利活動法人、社会福祉法人である。公募要領によれば、「中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするため、人手不足に悩む中小企業等がIoT・ロボット等の人手不足解消に効果がある設備を導入するための事業費等の経費の一部を補助することにより、省力化投資を促進して中小企業等の付加価値額や生産性向上を図るとともに、賃上げにつなげることを目的とする」補助金である。

共通する申請書類は「事業計画書」

 先ほどの3つの補助金の公募要領を確認して申請に必要な書類を比較すると、共通して求められるものがある。「事業計画書」である。小規模事業者持続化補助金は、「経営計画兼補助事業計画①」、「補助事業計画②」、「事業支援計画」(地域の商工会・商工会議所が発行する)の3点。ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金と、中小企業省力化投資補助金は、ずばり「事業計画書」を用意する必要がある。
 事業計画書と聞いて、何を書けばいいのか瞬時に思い浮かぶ人はそうそういないと思う。中小企業省力化投資補助金の説明サイトではそういった方々に向けて参考様式が掲載されている。yoshiki_business_plan_part1_part2_ippan.docx
 この参考様式で挙げられている記載事項は以下の通りである。

1.事業者の概要(現状分析・経営課題)
 1-1. 現状分析
 1-2. 経営課題
 1-3. 省力化補助金活用の動機・目的
2. 省力化投資の具体的内容
 2-1. 省力化設備導入による業務プロセスや配置のビフォーアフター
 2-2. 省力化投資により期待される効果と事業者全体への波及効果
3. 省力化投資で生まれる経営資源の活用による新たな付加価値の創出
 3-1. 労働生産性と給与支給総額等の向上
4. 財務計画(資金調達と今後の数値計画)
5. 事業の実施体制とスケジュール
6. 補足事項

 経営に関するフレームワークを一通り学んでいる人なら、作成できる書類だと思う。参考様式の中では分析のためのフレームワークもいくつか紹介されている。ただ、人手の限られている中小企業で、一からフレームワークを学び、それを正しく活用して事業計画書をまとめるリソースは正直無いんじゃないかと思う。

事業計画書は中小企業診断士にお任せください

 一方で、中小企業診断士の目線で先程の参考様式を見ると、ちょっと印象が変わってくる。一言でいえば「これ実務補習でやったな」と思う。中小企業診断士の実務補習や養成課程を経験された方なら賛成していただけると思うが、実は補助金の申請書で求められる事業計画書の内容は、まさに実務補習や実習で作成した提案書と同じである。敢えて違いを挙げれば、想定する読者が補助金の審査官なのか、診断先企業の社長なのか、というところぐらい。寧ろ「補助金の目的に沿っている必要がある」という縛りがあることで、提案のターゲットを絞りやすいと感じる。
 これはただ、不思議なことではないのかも知れない。そもそもこの記事で言及した3つの補助金は全て中小企業庁の管轄である。中小企業庁は中小企業診断士制度の所管・監督官庁でもある。補助金の審査官にも中小企業診断士が入っている訳で、その審査書類の要件と中小企業診断士試験の内容が重なるのは当然といえば当然か。 コロナ禍で補助金が大量に用意された時期、一年目の診断士にも多くの補助金案件がアサインされたと聞いたが、なるほどと思う。
 中小企業診断士資格って補助金の制度を回すために作られた資格だったのか、あるいは中小企業診断士の取得者を増やすために補助金申請業務に参画しやすい設計にしているのか。いずれにせよ補助金申請が診断士資格保持者の専門技能の一つであることは間違いない。
 中小企業庁管轄の補助金申請を検討される方は、ぜひ中小企業診断士にご相談いただきたい。

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